「あっ、懐かしい!これ月光荘のスケッチブックよね?」
ご近所にお住まいだというご婦人は、「文房具カフェ」という看板に惹かれて、ふらっと当店に遊びに来てくれました。
数十年も前、美大に通っていた頃、銀座「月光荘」のスケッチブックを愛用していたそうです。
「今でも、月光荘さんは銀座にあるのかしら?」
「はい。もちろん今でも健在ですよ!」
ご婦人は、今度久しぶりにお店に行ってみるとおっしゃっていました。
「うん。こういうことがやりたかったんだ」と私は思いました。
文房具カフェは、文房具のメーカーではありません。また、たくさんの文房具を取り揃えてお客様にワンストップでお買い物楽しんで頂く小売店でもありません。
我々が文房具カフェという空間を通じてやりたいことは、メーカーでも小売店でもない立場で、文房具業界・市場全体を活性化することです。
先ほどご紹介したご婦人は、文房具カフェを通じて、懐かしい文房具と出会い、久しぶりにお店へ行ってみようと思って頂けました。
文房具カフェの物販スペースは、様々な小売店様やメーカー様からのご提案によって品揃えを行っています。
小売店様やメーカー様から見れば、出店のようなイメージ。
なので、様々な想いがそこにアンバランスなまま共存しているため、雑多なイメージを感じるかもしれません。
また、取り扱いの種類もかなり絞り込んでいます。
先ほどの月光荘さんスケッチブックでいえば、本当はもっと魅力的な種類の商品があるのですが、あえて絞り込んだ品揃えにしています。
我々が提供したい価値は、「文房具カフェを通じて、様々な小売店様へ、人が回遊していくこと」です。
お店や会社の規模を問わず、文房具の魅力を発信する場所へ人が赴き易くなるきっかけを創りたいと思っています。
また、我々は同時に「空白」をしっかりこの空間に残していきたいと思っています。
「あそこにあれがあったら面白い」とか、「あの空間にこんな文房具を並べたい」とか、創造力や想像力を刺激するような空白です。
そう、新しいノートやスケッチブックを開いたときに、何か書きたくなる、何か描きたくなる、文房具そのものが持つ力。そんな力を持つ空間に文房具カフェをしていきたいと思っています。
文房具業界・市場は、成熟産業です。
そんな、成熟しきった産業に必要なのは、「空白」なのかもしれません。
「空白」が、イノベーションのきっかけとなる・・・気がします。
スケッチブックの最初の1ページ目を、開いたときのわくわく感のような。
「文房具って何?」と問われたとき、私は、「空白を創り出す道具」と答えています。
そんな、「空白」を創り出す空間に、文房具カフェをして行きたいなぁと思います。
文房具カフェ 代表 奥泉 徹