「文房具ブームって何だろう?」 ( 第1回/全3回) 文房具カフェ 代表 奥泉 徹

 

〜第1回〜 「斜陽産業」

 

 

文房具ブームだそうです。

 

 

コンビニエンスストアには、毎月のように文房具を特集したムック本や雑誌が並びます。

 

 

そのおかげで、文房具カフェもTV・ラジオ・雑誌など多くのメディアに取り上げて頂いています。

 

「わたし、文房具を愛しています。」と自認する、文房具カフェ オフィシャル会員も、700名を超え、この夏には1,000名に届く勢いです。

 

 

この文房具ブームの背景には、じつはとても面白い環境の変化、そして、人の心理の変化があります。

 

 

もともと、文房具業界は「儲からないけれど、そこそこ安定している」というのが業界の共通認識でした。

 

現在、国内のオフィス・事務用品市場においてトップの売上規模を誇る「コクヨ」の創業者である黒田 善太郎氏は、「面倒でやっかいで儲からないが、世のため人のためになる仕事」として自らの事業(帳面の表紙だけを作る会社だったそうです)を、「カスの商売」と呼んだそうです。

 

地味ではあるが、堅実。ゆえに、文房具業界は「不況に強い」と言われていました。

 

 

しかし、バブル景気崩壊後、ITの爆発的な拡大も重なり、文房具業界・市場は、一気に「斜陽産業」と見なされるようになりました。

 

ただし、「消耗品」としての最低限の市場は常に存在していただけに、文房具メーカーは、そこそこの業績を上げ続けることができました。

 

しかし、リーマンショック以降、長期的な景気低迷によって、国内におけるオフィス・事務用品の需要は、減少を続けています。

 

その大きな理由が、オフィス事務用品の法人需要の減少です。景気低迷の中、オフィス事務用品は、真っ先に企業のコスト削減の対象になりました。より、安いもの。とにかく安く。というのが、ここ数年における企業の文房具に対しての購買姿勢でありました。その代表格がコピー用紙。オフィス事務用品のカタログ通販を行う各社は、熾烈な値下げ合戦を行いました。「コピー用紙に関しては、利益度外視」という戦略に打って出たところもあります。

 

また、IT化、ペーパーレス化という変化も、代替品の脅威として、オフィス・事務用品の法人需要を減少させました。

 

このダブルパンチによって、国内の文房具メーカーは大きな不安にさらされることになります。

 

 

しかし、このような変化が思いもかけず、文房具の個人需要(パーソナル需要)を活発化させることになります。

続・・・